役員退職金
役員退職金は、理事又は監事の退職を起因として支給される臨時的な給与のことであり、慰労金的な性格も有しています。
一般的には、役員の従事期間の報酬の後払いと考えられています。
役員退職金支給の手続
退職金の支給は、医療法人にとって重要な事項ですので、社員総会、理事会の決議により決定すべきです。
退任の事実があったとしても社員総会や理事会などの正式な機関の決議を得ず、期末まで支給が行われない場合は、医療法人の決算の損金の額に算入されませんので、注意が必要です。
役員退職金の損金算入
役員退職金は、役員給与の損金算入規定(定期同額給与、事前確定給与、業績連動給与)とは関係なく、損金算入されることとなります(法人税法34条)。
ただし、役員退職給与の額が、その退任役員の業務に従事した期間、その退任の事情、その内国法人と同種の事業を営む法人でその事業規模が類似するものの役員に対する退職金の支給の状況等に照らし、その退任役員の退職金が不相当に高額である場合は、その超過部分は損金不算入となります(法人税法34条②、法人税法施行令70条)。
役員退職金の損金算入時期
退職した役員に対する退職金の損金算入の時期は、社員総会等の決議等によりその額が具体的に確定した日の属する事業年度か、または、その退職金を支払った日の属する事業年度(損金経理必須)とされています(法人税法基本通達9-2-28)。
役職変更による実質的な退職金の支給
医療法人の役員は2年に一度は役員の改選をするよう定められていますが、役員の改選による分掌変更等に際し、役員退職金を支給することがあります。
その分掌変更等によりその役員としての地位又は職務内容が激変し、実質的に退職したと同様の事情にあると認められる場合は、役員退職金として一旦打ち切り支給したとして、退職給与として取り扱うことができることとされています(法人税法基本通達9-2-32)。
例えば、その支給が、例えば次に掲げるような事実があったことによるものであった場合など、
①常勤役員が非常勤役員になったこと(ただし、代表権を有する者及び代表権は有しないが実質的にその法人の経営上主要な地位を占めていると認められる者を除く。)。
②理事が監事になったこと(ただし、実質的にその法人の経営上主要な地位を占めていると認められる者を除く。)。
③分掌変更等の後におけるその役員の給与が激減(おおむね50%以上の減少)したこと(ただし、法人の経営上主要な地位を占めていると認められる者を除く。)。
退任役員の退職所得の計算
退任役員の退職所得は、その年度の退職金の収入金額から退職所得控除額を控除した残額の二分の一に相当する金額とされています。
退職所得の金額=退職金の収入金額-退職所得控除額
勤続年数20年以下 | 40万円×勤続年数 |
勤続年数20年超 | 70万円×(勤続年数-20年)+800万円 |
ただし、役員等の勤続年数が5年以下である者が勤続年数に応じて受け取る場合は、下記の通り退職所得を計算します。
退職所得の金額=退職金の収入金額-退職所得控除額