医療法人を運営する上で、医療法人が同族会社の行為計算否認により税務署により不利な取り扱いを受けるかどうかについては、法人税法132条「同族会社等の行為又は計算の否認」が医療法人にも適用されか検討する必要があります。

同族会社等の行為又は計算の否認の規定

第百三十二条 税務署長は、法人に係る法人税につき更正又は決定をする場合において、その法人の行為又は計算で、これを容認した場合には法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるものがあるときは、その行為又は計算にかかわらず、税務署長の認めるところにより、その法人に係る法人税の課税標準若しくは欠損金額又は法人税の額を計算することができる。

適用を受ける法人の対象

次の法人の法人税につき、更正決定される場合に、適用されます。

① 内国法人である同族会社
② イからハまでのいずれにも該当する内国法人
イ 三以上の支店、工場その他の事業所を有すること。
ロ その事業所の二分の一以上に当たる事業所につき、その事業所の所長、主任その他のその事業所に係る事業の主宰者又は当該主宰者の親族その他の当該主宰者と政令で定める特殊の関係のある個人(以下「所長等」)が前に当該事業所において個人として事業を営んでいた事実があること。
ハ ロに規定する事実がある事業所の所長等の有するその内国法人の株式又は出資の数又は金額の合計額がその内国法人の発行済株式又は出資(その内国法人が有する自己の株式又は出資を除く。)の総数又は総額の三分の二以上に相当すること。

(注)ただし、内国法人が上記法人に該当するかどうかの判定は、行為又は計算の事実のあった時の現況によるものとする。

同族会社とは

法人税法2条①10号に規定されいてる通り、同族会社とは、「会社の株主等の三人以下並びにこれらと政令で定める特殊の関係のある個人及び法人がその会社の発行済株式又は出資の総数又は総額の百分の五十を超える数又は金額の株式又は出資を有する場合その他政令で定める場合におけるその会社をいう」とされています。
また、株主等とは、同条14号において、「株主又は合名会社、合資会社若しくは合同会社の社員その他法人の出資者をいう」とされています。
ここで、現在の医療法人は持分のない医療法人がメインですので、持分もない医療法人には議決権のみを保有する社員しかいないので、株主等に相当する出資者はいません。

結論

よって、出資者がいない以上、①の同族会社に該当することはないし、②の出資総額の2/3以上を保有することもないので、同族会社等の行為計算否認の規定は適用されないと考えられます。
同族会社は「会社」である株式会社、合名会社、合資会社、合同会社、特例有限会社だけに対する概念と言えます。