事業譲渡の対価

事業譲渡の対価の計算には、営業利益の3年から5年分、医療収入の6か月から12か月分など色々方法があると思いますが、その譲渡対価が本来の計算結果と異なる契約をしてしまったときに、税務上どのように取り扱われるのでしょうか。

前回記載したように同族会社の行為計算規定は不適用となりますが、寄付金課税や受贈益課税は一般法人同様に適用されることとなります。

事業譲渡

下記の事業が無償(又は低額)で譲渡された場合、どのように税務上取り扱われることになるでしょうか。
特に、事業譲渡価額を調整したと見られる状況、例えば、理事などの役員又は従業員に対する事業譲渡、若しくはその親族が経営する医療法人に対する事業譲渡が想定されます。

譲渡事業A事業B事業
年間の事業所得2,000万円▲2,000万円
事業譲渡の対価の計算6,000万円-万円

寄付金課税

寄付金の損金不算入の規定は、内国法人が各事業年度において支出した寄附金の額の合計額のうち、その内国法人の当該事業年度終了の時の資本金等の額又は当該事業年度の所得の金額を基礎として政令で定めるところにより計算した金額を超える部分の金額は、当該内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない、されています。

また、寄附金の額については、同条7項に規定されており、寄附金、拠出金、見舞金その他いずれの名義をもつてするかを問わず、内国法人が金銭その他の資産又は経済的な利益の贈与又は無償の供与をした場合における当該金銭の額若しくは金銭以外の資産のその贈与の時における価額又は当該経済的な利益のその供与の時における価額によるものとする、とされています。

さらに、8項には、内国法人が資産の譲渡又は経済的な利益の供与をした場合において、その譲渡又は供与の対価の額が当該資産のその譲渡の時における価額又は当該経済的な利益のその供与の時における価額に比して低いときは、対価の額とその価額との差額のうち実質的に贈与又は無償の供与をしたと認められる金額は、前項の寄附金の額に含まれるものとされ、実質的な寄付金にも言及しています。

寄付金課税の例

よって、A事業を無償(又は低額)で譲渡した場合は、下記のような税務上仕訳が生じたとして、寄付金課税の対象となる可能性があります。
役員及びその関係者に譲渡するような場合などは、このような処理があったとみなされることが多いと思われます。

寄付金 6,000万円 / 受贈益 6,000万円

寄付金課税対策

特殊な事情のない限り、A事業を無償(又は低額)で譲渡した場合、寄付金課税される可能性があると思いますので、A事業が譲渡された経緯、譲渡価額の計算根拠、譲渡条件などを考慮した上で、その譲渡価格が適正価額と主張できるように対策しておく必要があります。
また、B事業のような不採算事業とセットで売却することにより、超過収益力の高い事業の営業権と相殺された状態で売買するなどすることにより、寄付金課税避けることもできるかと考えます。