1、業務範囲制限のデメリット
個人開業医とは異なり、医療法人は、病院、診療所又は介護老人保健施設の運営の本来業務と一定の付帯業務のみに業務範囲が制限されています。
したがって、個人開業医経営の時に、診療所経営と併せて他の事業を行っていたとしても、他の事業は医療法人において行うことはできず、引き続き個人事業として残すか、MS法人を設立し、MS法人に事業移転するか選択することになります。また、その他の事業を閉鎖するという選択もあるかもしれません。
2、社会保険強制加入のデメリット
常勤の役員、従業員ともに社会保険に強制加入となり、社会保険料支払額のうち半分は会社の経費負担となります。
また、医師会の国民健康保険組合に加入するという選択肢もあります。
3、出資金や稼得利益の払戻請求権の喪失のデメリット
医療法人は剰余金の配当が禁止されているため内部留保が増加する傾向にありますが、医療法人を解散させた場合、残余財産の帰属先が国、地方公共団体などとなり、基本的には個人で受け取ることはできません(経過措置型医療法人を除く)。ただし、適正な額に限られますが、理事長などが医療法人より役員退職金として金品を受領することは可能です。
4、事務運営の管理コストの増加のデメリット
医療法人の場合、どのような医療法人でも次のような事務運営の管理事務が経常的に増加します。
①医療法人は病院会計準則に従い、決算書を作成することが求められ、複雑な決算書の作成と法人税申告書を作成することとなります。
②毎会計年度終了後3月以内に、以下の書類を都道府県へ提出する必要があります。
ア、事業報告書
イ、財産目録
ウ、貸借対照表
エ、損益計算書
オ、監事の監査報告書
③毎会計期間終了後2月以内に、財産目録に記載された資産の総額を登記する必要があります。
④役員の変更のため、2年に一度は都道府県への役員変更届の提出と変更登記が必要となります。
また、上記以外にも、一定の事実の発生又は変更により、関係役所に対し、申請や届出の手続きが必要なることがあります。
許認可申請、届出はこちら…
5、税金面の非効率のデメリット
赤字であっても、住民税均等割額が発生するなど、所得水準が低い場合は逆に税金負担が大きくなります。
また、他県にも分院を持つ医療法人はその分も住民税均等割額が発生します。
6、医療法人の閉鎖処理のデメリット
医療法人は解散時に都道府県の認可が必要となり、個人的な理由による解散は認められません。
そのため理事長が引退される場合は、新理事長を選任するか、M&A先を募集する必要があります。